コーヒー豆とは?
コーヒー豆は、コーヒーの果実の中心にある種子にあたる部分です。その種子は果皮、果肉、幾重にもなる層に包まれています。
生豆となる種子のすぐ外側にあるのはシルバースキン、その外側がパーチメント、さらに外側を粘着性のあるミューシレージが覆います。特にミューシレージはヌルヌルとしており、収穫したての水分の多い状態では簡単に種子から離れません。ですからこの果皮からミューシレージまでの部分をいかに上手に取り外し、よい状態で生豆を取り出すかが重要になるのです。
7つの精製方法
精製の基本は「種子を包み込んでいる皮やミューシレージを取り除き、コーヒーを乾燥させること」です。ある程度乾かすとパーチメントが割れて、中から簡単にコーヒーの種子が出てくるからです。スペシャリティコーヒーでは主に7つの方法のいずれかでコーヒーは精製されています。
1 ナチュラル
最も古くから普及している伝統的な精製方法。収穫した果実を広げて、天日干しにする。水は使わない。豆を中庭(パティオ)で干すこともあれば、空気の循環をよくするために、高床式で干すこともある。カビの発生や腐敗を防ぐために、定期的に転がせる必要がある。綺麗な水が手に入りにくい一部の地域(エチオピアやブラジルなど)で行われている方法。
【メリット】華やかで果実味のあるフレーバーが加わる。
【デメリット】精製過程で不快なフレーバーが加わってしまう可能性が高いこと。身長かつ丁寧にナチュラル加工された豆しかスペシャルティコーヒーとしては使えない。
2 ウォッシュト
精製に大量の水を使う方法。果実をパルパーという機械にかけて、果肉を取り除いた後、種子についたミューシレージを取り除くために、大きな水槽に豆をつける。大量のペクチンを含んだミューシレージは、水中微生物による発酵で分解される。豆を引き上げ、もう一度洗浄して表面に残ったミューシレージを取り除き、パーチメントに覆われた生豆を取り出す。ナチュラルと同様に天日のもとで乾燥させる。この状態のものをパーチメントコーヒーと呼ぶ。
【メリット】苦味や雑味のないクリアなフレーバーになる。
【デメリット】大量の水を使うこと、それが環境汚染に繋がる可能性がある、また気温と水温の適性に管理をしないと、発酵が進みすぎて品質に影響が出てしまう。
3 パルプドナチュラル
近年登場したウォッシュトとナチュラルの折衷案で、セミウォッシュトとも言われる。高性能パルパーやミューシレージリムーバーと言われる高性能な機械が出てきたことで可能になった方法。高性能パルパーでミューシレージ部分の大部分をこそぎ落として、パーチメントに覆われた豆状態で乾燥し、出荷前に脱穀。
【メリット】ウォッシュトとナチュラルの良さを兼ね備えている。豊富な水が確保できない場所でも処理できる。
【デメリット】ミューシレージを残したまま乾燥させるので、予期せぬ発酵が進むことがある。
4 ハニープロセス
コスタリカやパナマなど中南米の農園では、セミウォッシュトの精製をハニープロセスと呼ぶことが多い。通常のパルプドナチュラルよりも使う水の量が少なく、パルパーを通した時にある程度の果肉やミューシレージを残すように調整される。その後、乾燥棚やパティオで乾燥。
【メリット】残った果肉に十分な糖分が含まれたまま乾燥させるために、コーヒー豆自体にに甘みやコクが加わる。
【デメリット】豆に果肉が残されるために、乾燥時に発酵豆や欠点豆が生じる可能性が高い。
5 スマトラ式
インドネシア独特の精製方法で、現地では「ギリン・バサー」と呼ばれる。コーヒーの収穫後、果肉を除去して、軽く乾燥。通常は水分量を11~12%を目安に乾燥させるのに対し、スマトラ式は30~35%まで上げる。その後、パーチメントを取り除いて生豆にしてから2度目の乾燥プロセスへ。ここがスマトラ式の最大の特徴。再び、腐敗なく保存できる状態まで乾燥させることで、豆は深い緑色となる。
【メリット】インドネシア産らしいコクや風味が加わる。
【デメリット】コーヒー本来の味が感じにくい。
6 アナエロビック・ファーメンテーション(嫌気性発酵)
近年、スペシャルティコーヒーで見られる新しい精製方法のひとつ。発酵槽に水とコーヒー豆を入れ、酸素を遮断した状態で一定時間コーヒーを置く。こうすることで酸素のないところで活動する嫌気性微生物が発酵を助け、ミューシレージが柔らかくなる。そのまま乾燥させた場合を「アナエロビック・ナチュラル」と呼ぎ、水で洗って乾燥したものを「アナエロビック・ウォッシュト」と呼ぶ。
【メリット】これまでにないフレーバーが生まれる。
【デメリット】高い管理力が必要とされ、不良なコーヒーが混じっているとすべてのコーヒーの味が劣化する。